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水無月

 職場は摩天楼の高層階にあって、広い窓からは空がよく見える。先月までは青々としていた空も、6月に入り一転どんより曇ってばかりだ。光が差し込まない部屋にいると、なんだか気が滅入ってきてしまう。梅雨入りと同時に風邪を引くのは毎年のことで、我が身体の規則正しさには感心するしかない。雨に降られるのは嫌いではないはずなのだが、困ったことに身体は正直なのだ。退屈な空、退屈な仕事と優れない体調のせいで、月の前半は憂鬱な気持ちのまま終わってしまった。

 6月になると鎌倉に行きたくなる。鎌倉には紫陽花がきれいなところがいくつかある。江ノ電極楽寺駅から海のほうに歩いて行くと、今は工事中で入れないのだが成就院という寺がある。そこでは参道の脇に青や紫の紫陽花が咲いていて、眼下には海が広がるのでとても美しい。君が泣いたって紫陽花は咲くのです。それから海の方まで降りて行って、由比ヶ浜を越えて鎌倉まで戻ってくるのもいいし、少し遠いが反対側の江ノ島まで歩いて行くのもいい。天気が悪かったとしても、海から吹いてくる風は夏が近いことを仄かに感じさせるから気分がよい。憂鬱なままではつまらないから、そういう6月を探しに行かなくては。